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福岡県の不動産市況
福岡県の不動産市況
 本特集記事は、主に賃貸仲介・管理業を行う県内53社の宅建業者を対象に、2月上旬から3月上旬にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内主要エリアの賃貸市場の動向についてまとめたものです。
福岡市東区・東部地区
JR香椎駅前の空地増加は地価上昇の影響か
 JR香椎駅前の再開発は一段落していますが、テナントが入らず周辺は空地状態のまま駐車場としての利用が続いています。地価が高騰し、駅前の最低坪単価が10年前の3倍となっているのも要因と考えられます。
 また、遊園地「かしいかえん」が閉園したことで、跡地利用への関心も高く、5年後にはマンションを中心とした住宅街へと生まれ変わるのではとの声も聞かれます。
箱崎地区は九大移転跡地と西鉄貝塚駅前の再開発に注目
 箱崎地区は九大移転跡地と地下鉄・西鉄貝塚駅前の再開発に注目が集まっています。
 同地区はJR駅、地下鉄駅、区役所が揃い、生活の利便性が高いのが特徴ですが、JRの高架線工事が一段落した段階で箱崎駅が快速停車駅とならなかったことに住民は落胆しています。
賃貸物件は新築や築浅人気も動きは鈍化
 唐原地区における今春の賃貸市場は、新築や築浅物件の人気は変わらないものの、学生の動きは鈍くなっています。これは、オンライン授業が継続されているためだと思われます。また、コロナ禍の影響で、物件を探す時期が遅れてきています。成約率が高いのは、シングル層では香椎、学生は唐原、下原、香住ヶ丘。DINKs(ディンクス:共働き夫婦のみ)層だと千早、香椎。ファミリー層は交通と環境重視で、千早、香椎、照葉となっています。
福岡市への利便性から若い層が定住
 粕屋エリアの志免町は、福岡市の東側に隣接し、JRをはじめバスでも市内へ約20分のところで、地下鉄空港線駅にも近いため戸建て用地がない状態が続いており、実勢価格とかけ離れた値段で取引され、地価が上昇する結果を招いています。
 志免町は、福岡市内で住宅を購入できない若い層が利便性を評価し定住していますが、小学校数の充実にも住民は満足しています。
企業誘致の施策だけでなく居住環境に重点をおいた施策に期待
 古賀市の青柳大内田地区や今在家地区には物流拠点・工業団地開発に向けた地域計画が進んでいます。今後、山林・農地を事業用土地にして物流拠点として活用すれば、人口は自然増加し、賃貸住宅も潤うと予想されます。
 今春の賃貸市場は例年並みで、法人契約の動きは見えません。コロナ禍で退去が減ったことは、家主や管理業者にとってプラスの要因でした。成約率の高いエリアを需要層別にみると、シングルは駅近もしくは駅から離れた物件でも駐車場があれば人気です。ファミリーはJR古賀駅徒歩圏内で3〜4人世帯が多く、2LDK〜3LDK。高齢者は古くても借家の希望が多くあります。
博多区
ららぽーと福岡の開業と地下鉄七隈線の博多駅乗り入れに期待
 青果卸市場跡地に今春、大型商業施設「ららぽーと福岡」がオープンします。JR竹下駅から徒歩10分圏の約8万6千㎡の広大な市場跡地に誕生するため、経済的効果を期待する声が高まっています。
 一方、地下鉄七隈線が博多駅に乗り入れますが、博多駅周辺には古い戸建てが点在し、高齢者が取り残されているため、相続問題を解決し、再開発に繋げられるかが課題です。
賃貸市場が活発な博多駅南界隈は賃料の坪単価が9千円〜1万円に上昇
 博多駅南界隈は賃貸市場が活発です。コロナ禍でも新築物件が数棟建ち、最新設備で賃料も上がっていますが、供給すれば入居は決まるという状況です。シングル向け1Rにリビングを加え床面積が30㎡を超えると、坪単価9千円から1万円を超える物件もあり、賃料が高騰しています。
 地下鉄東比恵駅周辺は賃料設定が駅南より高額な物件も見受けられます。7万円前後の賃料に最も人気があるため、床面積約27㎡(約9坪)の物件が増えています。
博多駅周辺のオフィス需要はコロナ禍で足踏み状態
 天神が再開発に伴う賃料高騰でオフィスビルの賃料が坪単価 2〜3万円と上昇しているなか、博多駅周辺のオフィス賃料は高くても坪単価2〜2.5万円です。ただ、コロナ禍で東京等からの出店は止まってしまっています。
 博多区の今春の賃貸市場は、移動は少ないものの入居率は良好。成約率の高いエリアは、シングル層やDINKs層、外国人の場合は博多駅自転車圏、ファミリー層は博多駅から少し離れた場所で駐車場が確保でき賃料が高くないところ、高齢者はバスや買物に便利なところです。どの層においても築浅物件の人気が高く、今後も需要は増加するとの予測です。
中央区
避難経路確保など管理体制が問われる天神裏通り
 数年前から天神の裏通りでは古い民家や既存のアパートを改造して飲食店やブティックに転装する、若者を中心とした一つのブームが起きていました。当時は法的な部分をクリアできれば用途変更は容易でしたが、今は市や消防署の審査が厳しく避難経路などの管理体制が問われます。昨年12月、大阪北新地で発生したクリニック火災で避難経路が閉ざされたまま大勢の患者らが亡くなりましたが、この一件で消防署がビル防災を厳しくしています。
天神周辺の再開発による不動産価格は高止まり状態
 「天神ビックバンプロジェクト」の第一弾が成功を収め、都心部を中心に不動産価格も高止まり傾向。天神再開発の新ビル「天神ビジネスセンタービル」(明治通り)のテナント賃料は坪単価3万円に決まり、後追いで他の新ビルは坪単価3〜3.5万円。明治通りの通常ビルが坪単価1.5〜2万円で1.5倍に値上がりしています。
 また、これまで天神には広い事務所がなく博多駅エリアへ流れていましたが、中心街に新しいビルが次々と登場し、広いフロアができたことで、天神回帰の流れが生まれそうです。
健康・美容関係の出店が増加
 今春の賃貸市場の特徴として、健康・美容に関する事業形態のテナント申し込みが増加し、コロナ第6波の中でも入退去は共にコロナ禍前の状態に戻ったといいます。土地価格と建築価格の高騰で個人オーナーの新築着工件数は激減しています。
南区
コロナ終息後の空き店舗に懸念
 南区域内では地価等の高止まりが続くと考えられ、コロナ終息後は店舗の空き状況が懸念されます。
 西鉄大橋駅の改装後は若者が集まるため賑やかになりましたが、大橋駅近隣大学の学生などは、大橋には住まず別のエリアから通学している実態もあります。
賃貸は1LDKの需要が増加
 1LDKタイプの需要が増え、なかでも新築物件の入居希望者が増えています。ただ、高宮駅前に登場した1LDK床面積35〜40㎡、賃料7万円は空室が目立ちます。ファミリー向け2LDKタイプも増え、賃料は10万円前後と高めでも満室状態です。野間エリアの2LDKは8〜9万円ですぐ決まります。
 若久エリアでは、賃貸市場に動きは少なく、シングル層の場合、風呂・トイレが別で、室内に洗濯機置場があれば成約率は高くなります。DINKs層はエリアに関係なく50㎡以上、ファミリー層もエリアに関係なく60㎡以上が人気です。
城南・早良・西区、糸島地区
コロナ禍により福大生の需要が減少
 城南区七隈エリアは福岡大学の影響で学生向けアパートの需要が多く、人口の6割を占めていますが、コロナの影響で学生の需要が減少しています。
 今春の賃貸市場は、コロナ禍で問合わせも含め驚くほど入居希望者が減少しました。2月の日曜日に来店がゼロと、今まではあり得ないことが起こったといいます。コロナが終息しても地下鉄延伸の影響で福大生のひとり暮らしは減ると予想しています。
今宿では物件に動きなく、空室なし
 西区今宿では、事前にインターネットで調べたうえで来店する入居希望者が増え、来店成約率は上がったものの、全体的には移動が少ないといいます。
 新築物件の賃料は高くなっており今宿のバイパス沿い2LDKが8万円(昔は6.3万円+共益費)。古い物件は割安感があって決まりやすく、既存1R(25㎡)は4万円、新築は5万円で供給されています。
九大留学生のコロナ入国制限で留学生入居が大幅な減少
 入国制限以前(平成30年)は、九州大学伊都キャンパスには、約2500名以上の留学生が在籍していましたが、コロナ禍により、同大学の留学生が入国制限の対象となり入国できず、学生向け賃貸住宅の需要が大幅に減少しました。また、県外から九大へ入学する学生へのアプローチができず、入居希望者が一気に減りました。
食事付き学生専用大型賃貸マンションは動きが好調
 留学生の居住斡旋では苦戦する一方、九大生を対象とした食事付き学生専用の賃貸マンションは好調な動きを見せています。
 九大周辺の賃貸アパートは需給バランスが折返し時期を迎え、新築や築浅の物件が多く、築年数が20年を超える物件や大学からの距離が遠い物件は選ばれにくくなっています。
増える糸島移住に関する全国各地からの問い合わせ
 コロナ禍を機にこの2年の間、全国各地から糸島地区への居住地に関する問い合わせが増えていますが、行政の対応が追い付かず、開発できる土地が少ないため、需要の割には供給が圧倒的に少ない状況です。
地元内での住み替えに苦戦「引越難民」の増加
 糸島市前原では、移住希望者のトライアル移住として賃貸を利用するケースが多く、圧倒的な需要に追いつかず、地元内での住み替えに苦戦する「引越難民」が増えているといいます。また、テレワークの普及に後押しされ、田舎暮らしへの関心の高まりから問い合わせが増加している一方で、法人の転勤などの移動は少なかったようです。
 成約率の高い物件は、シングルの場合、広さより賃料を重視するミニマリストが増えているそうです。1LDKよりも1Rで賃料がお手頃な物件にニーズがあります。高齢者は、JR駅近くの利便性を好む層と豊かな自然と共生する暮らしを求める層と二極化しています。
 間取り別の賃料相場ですが、1R〜1DKが3〜5万円。2DK〜2LDKが5〜9万円。3DKが5〜8万円。3LDK〜が7〜12万円です。

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