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福岡県の不動産市況
福岡県の不動産市況
 本特集記事は、主に賃貸仲介・管理業を行う県内53社の宅建業者を対象に、2月上旬から3月上旬にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内主要エリアの賃貸市場の動向についてまとめたものです。
福岡市東区・東部地区
青葉エリアは収益物件を探す投資家が増加
 東区東端にある青葉・名子エリアにおいて、青葉エリアは住宅地として人気ですが、住民が高齢化し、入れ替わりの時期を迎えていると言われています。一方、名子エリアは小中学校が遠方なため、青葉エリアより人気はありませんが、割安という理由で選択されることもあるようです。
同エリアの賃貸は動きがなく、青葉エリアは人気だけに常に満室状態です。この一年間の動きをみても、収益物件を探す投資家からの問い合わせが増えています。
香椎エリアは駅近の1Kにニーズ
 香椎エリアではJR香椎駅西口を中心とした区画整理事業が一段落した状態です。同エリアは地価及び建築費が高騰していることから、1K(24㎡)の築古で賃料3~4万円の物件が、新築6万円台でも決まります。一時期、1LDKが建てられていましたが、駅近であれば1Kにニーズがあり、1Rや2DKは淘汰されています。テナントビルは賃料設定が高く、客付けが難しい状況です。
ファミリー向けには駐車場が必須
 糟屋郡の中でも須恵エリアは、天神・博多までの利便性の良さから福岡市内への通勤者も多く、最近注目を集めています。
 賃貸物件は、単身用が少なく、多くがファミリー向けです。また、車を所有している世帯が多いため、駐車場付きが必須条件となっています。
宗像市では外国人向けシェアハウスにあらたな需要
 宗像市では住宅地がJR鹿児島本線沿いに集中しており、これまでは東郷駅が中心だったものの、今は特急も停車する赤間駅が中心に変わっています。
 賃貸市場を見るとファミリータイプは3LDKの希望が多く、夫婦は2LDK、一人暮らしは1Rより1Kが人気です。外国人を雇う企業がシェアハウスを探すことも増えています。
博多区
地下鉄七隈線の博多駅延伸、新駅開業で不動産取引に関心集まる
 博多区でいま最も関心が寄せられているのが、福岡市営地下鉄七隈線の博多駅までの延伸に伴う櫛田神社前駅の開業です。市南西部から天神経由で博多駅まで直結するため、沿線をはじめ周辺部の将来的な不動産開発、取引に関心が集まっています。
 そのような状況ですが、土地は売れているものの、戸建て・分譲マンションの動きは鈍いようです。
天神の再開発後の設定賃料が博多駅周辺の新築オフィス賃料に影響
 博多駅周辺の新築オフィスの賃料に関しては、地場企業が坪単価1.5万円以内(共益費込み)で設定しているところを大手は坪2~3万円を設定しています。再開発エリアの賃料は高額化しており、未入居のビルも多いようです。
コロナ規制解除で民泊に復活の兆し
 コロナ禍でいったん閉鎖した民泊がコロナ規制解除で復活の兆しを見せています。古い3階建てビルを改装してベッド付きで1泊1.5万円。木造アパート2階建てが家賃3万円で借り手がなかったものが、民泊へ改装し、1ヵ月20~30万円を売り上げている例もあり、民泊全体が動き出すのも時間の問題のようです。
家賃は上昇傾向であるものの1LDKは供給過多。築古物件は厳しい状況に
 賃貸市場に関しては、1LDKは供給過多で空室が見られるものの、好立地物件は好調です。2LDK・3LDKも賃料は上昇していますが、物件が不足していると博多駅中央街の業者は話します。また、博多駅南では、オフィスも住居も古い物件の空室対策は一層厳しくなると思われます。
中央区
天神再開発事業は進むも、コロナの影響で賃料設定が課題に
 中央区で一番の関心事は、天神地区の再開発事業「天神ビッグバン」計画です。高度制限緩和で、西鉄福岡駅一帯の既存ビルの建て替えを促し、新たな天神の街並みを創造しようという大型プロジェクト。「天神ビジネスセンタービル」はすでに令和3年10月に竣工しています。賃料は坪単価3万円と今までにない高額な賃料設定にも関わらず、ほぼ満室状態です。大名小学校跡地に完成した「福岡大名ガーデンシティ」も坪3万円代と高額賃料で募集をしていますが、こちらは竣工後満室とはいかず、苦戦を強いられている状況です。
土地・戸建は好調、分譲マンションは低調。賃貸は2LDK中心で新築賃料は17~18万円
 売買に関しては、土地は情報さえ出てくれば売れる状況で、戸建ても売れています。今の若い世代は庭を必要とせず、1階が駐車場で2~3階が居住スペースの狭小住宅でも需要があります。そのような物件は階段が狭く、引っ越しの際には、別途費用をかけて冷蔵庫をベランダから引き上げます。まさに東京並みの居住環境です。土地・戸建ての好調に反して分譲マンションは低調のようです。
 賃貸物件については、ファミリータイプが少なく、2LDKがメインで床面積は50~60㎡。賃料は13~15万円。新築は17~18万円。学校区での差はありません。
コロナ前に取得したホテル用地はビジネスビルへ
 天神・博多エリアのホテル用地はコロナ禍で渡航制限が続いた結果、ビジネスビルの企画へと変更されています。天神徒歩圏の新築分譲マンションは販売が好調で、上昇傾向の販売価格が賃料相場も押し上げています。また、今まで住環境に適さないとされていた地域にもワンルーム系の賃貸マンションが建ち、一人暮らしの若者に人気となっています。その他、清川・高砂地区は天神まで自転車で行ける利便性が評価され、一人暮らしの若者の街として注目されています。
南区
急行・特急が停まるため人気の高い大橋エリア
 福岡市南区で変化が大きいのは西鉄大橋駅周辺です。大橋駅は急行・特急が止まるため、商品価値が高いと判断されています。また、古い建物が建て替わり、地価が上昇しています。駅前の利便性重視で分譲マンションを投資家が買い、5000万円超の居室を賃料25万円で賃貸に回していますが、個人からの需要はあるようです。
 大橋エリアの分譲マンションはファミリー向け実需が多く、1Rタイプの投資型分譲マンションはありません。地価の上昇により大橋駅中心部の賃料が高騰しており、賃貸物件は井尻や高宮駅の西側、野間方面などの周辺部へ拡散しています。大橋駅近くに第一薬科大学がありますが、学生の多くは大橋周辺には住んでいません。
大楠エリアや高宮・平尾駅周辺は駐車場不足で駐車難民状態
 大楠エリアは駐車場不足もあり、月極駐車場に空きが出るとすぐ決まる傾向があります。高宮・平尾駅周辺には九州中央病院や日赤病院などに勤める看護師をターゲットとした1LDK物件が多くあり、供給過剰となっています。同エリア周辺も「駐車難民状態」にあります。高宮エリアは2LDKタイプが品薄状態で、中でも大楠3丁目界隈で2LDKを探すことが難しい状態です。
西鉄・JRのダブルアクセスで賃貸需要が多い井尻エリア
 井尻エリアは西鉄・JRのダブルアクセスで、博多駅までは10分、天神までは12分の好立地であるため、賃貸需要が大きいという特徴があります。しかし、エリア全体に遺跡があり、試掘が進められ、ようやく終わった状態です。ここ1~2年は古いアパートの解体が進み、跡地には木造やRCの賃貸物件が建っています。
城南・早良・西区、糸島地区
今宿エリアの住宅市場は更に西の糸島エリアへと広がる
 今宿エリアの住宅市場は横ばいか上昇傾向にあり、需要があるなかで物件がない状況です。人気エリアは西区今宿から西へ向かって糸島へと広がっています。
 JR筑肥線糸島高校前駅周辺の区画整理に伴う分譲地の売れ行きは、好調で完売しています。志摩師吉エリアは、ほとんどが市街化調整区域ですが、近くにイオンがあることで市街化区域での住宅開発が行われています。更に西へ行くと深江エリアも住宅が建っています。
 蔵持エリアでは人口減少に歯止めをかけることを目的に、戸建て専用住宅に限って開発ができる地域に指定されたため、市街化調整区域内で住宅開発が行われています。
「海の見える街」人気も、海沿いの土地は城南区の高級住宅並み
 最近の住宅市場をみると、今宿エリアは「海の見える街」を探したい顧客の需要が高く、特に海沿いの土地は、城南区の高級住宅並みの価格です。
 一方で早良エリアは建売住宅をみても昨年から完成在庫が増えており、需要が落ちてきている感じがあります。姪浜エリアも地価が高く、敬遠される傾向もあります。
地下鉄七隈線の博多駅延伸開業も既存沿線の新規分譲は期待薄
 福岡市営地下鉄七隈線の博多駅乗り入れ路線が開通したことに伴い、既存沿線の物件の価値は良くなると思われますが、宅地開発は限られており新規の分譲は期待できません。始発終着駅の橋本駅周辺は市街化調整区域であり、当面、新規宅地開発は見通せない状況です。

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