福岡県の不動産市況
本特集記事は、主に賃貸仲介・管理業を行う県内53社の宅建業者を対象に、2月上旬から3月上旬にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内主要エリアの賃貸市場の動向についてまとめたものです。
筑紫野地区
賃貸から賃貸への移動が増加
春日市エリアの賃貸市場に目を向けると、昨年の夏は賃貸から新規分譲マンションや新規戸建てへの移動が目立ち、賃貸から賃貸という流れはほとんどなかったものの、冬に入ると賃貸から賃貸への移動が見られるようになりました。
シングル層についてはコロナの影響で賃貸への入居が減少し、高齢者は施設などへの入所が増える可能性があり、法人は解約が増え、外国人は入国制限次第とみています。
大野城市エリアの賃貸市場は良好
大野城市エリアの賃貸市場に関しては、入居状況は良好です。なかでも駅近物件が人気です。白木原駅周辺はファミリータイプが多く法人契約は少ない状況で、シングルは社会人が多く、九大春日キャンパス(大学院)も新入生が少なくなっています。外国籍の大半はアジア系で占められ、賃貸入居にあたっては学校の教員が保証人となっており移動は少ない状況です。
また、古い物件に対し相続対策として多額の投資を行うリノベコンサルは少なくなっています。
朝倉市エリアでアパート増加建てれば即満室に
朝倉市エリアは昔から売買物件が多いエリアですが、最近はアパートが増え、3LDK(70㎡)を建てると即満室となります。若い人が少なく高齢者かファミリー層が増加。店舗は病院や学習塾の入居が目立ちます。
しかし、コロナ禍で賃貸物件の売上げは大幅に下がり、法人は転勤が減ったことが影響しています。また、リモートによる内覧・契約などが充実している都市圏の不動産業者へ顧客が流れているのも要因の一つです。
久留米地区
資生堂の工場が来年春に稼働 1000人の従業員を現地で採用
「久留米・うきは工場団地」内には、現在、化粧品メーカー「資生堂」の工場が建設中で、すでに住居需要が発生しています。このエリアでは住戸が不足しており、今後の対応が注目されます。入居希望者は、教育環境や大型量販店などのインフラが気になっているようです。
アパートも入り口から部屋の中が見えない仕様へ
ここ10年で1DKタイプは1LDK(30〜40㎡後半が主力)へと進化しています。アパートでも入り口から部屋の中が見えない仕様や、女性からは洗面台と脱衣所の独立などのニーズがあり、結果、床面積の拡大につながっています。
小郡エリアのコンセプト賃貸の需要が増加
小郡エリアの賃貸物件は動いており、アパートの新築も多くあります。高額物件でもメゾネット仕様やバイク専用のガレージ付など、コンセプト賃貸の需要も確実に増えています。以前はなかった「ペット可」も広まっています。
県南地区
柳川の賃貸市場は戸建てが目立つ
柳川市では、昨年に比べ今年は転勤の話も聞かれ、またテナントの契約が増えるなど、少し動きがみられるといいます。戸建てが目立ちますが供給過剰気味なうえ新築も建っているため、築30年以上の物件は空室が埋まりづらい状況です。また、賃料の上限(7万円。新築だと2階建・3LDK(60㎡)で8万円)を超えると新築でもなかなか決まらない状況です。
交通の便がよく新たなニーズを生む
高速道路八女IC、JR駅、新幹線など交通の利便性が良い筑後市は、県内各地域との繋がりの拠点となっています。特に、福岡市からの新幹線通勤圏として新たなニーズが生まれ、久留米市のベッドタウンにもなっています。
筑後市では、シングル層や外国人の勤務先となる工場が多い八女IC付近で問い合わせが多いといいます。DINKs層は新築物件が多い所、ファミリー層は駐車場が複数台ある所、高齢者はスーパーや病院が多い中心部、法人は利便性の高い中心部が人気となっています。
持ち家志向が高い大木町
大木町は久留米市と接し、農業従事者が多く、大規模な農家の多くが外国人を雇用しています。
賃料を払うよりは家を買った方がよいという考えの方が多く、また、学校を移りたくないとの思いが、持ち家志向に向かわせています。
八女インター近くに工場建設
広川町エリアには、食品メーカー・ヤマエ久野が高速道路八女IC近くに工場を建設する計画で、従業員を大規模雇用する予定です。
そのため、工場操業までには今後数年を要すると思われますが、新たにアパート等の住宅関連施設が増加すると見込まれます。
大川エリアの学生需要に影響なし
医療福祉関係の大学はコロナに関係なく授業が進められており、学生の賃貸市場に影響はありません。
大川市では、学生向けの小型物件が新設されていることと、ファミリー層の移動が前年に比べ多少は増えた実感があるといいます。高齢者は格安1R、法人は工場が多い地域で、外国人留学生寮(安めの3DK)が埋まっているといいます。
住宅用途のエリアが狭いみやま市
平成の大合併で3町が合併し生まれたみやま市には都市計画はなく、一部に用途地域がある程度で、住宅用途のエリアは狭く、主な産業は農業です。みやま柳川IC近くに工業団地を造成する計画がありますが、完成は4年後です。
筑豊地区
コンパクトシティをめざした開発計画
飯塚市は立地適正化計画に基づくコンパクトシティづくりの一環として、JR飯塚駅前の再開発を計画しています。商業地域の一部を幹線に沿って住宅街を整備予定ですが、まだ具体的な環境変化はみられません。
飯塚駅周辺での賃貸市場が活性化
飯塚駅周辺での分譲仕様のマンション需要が増え、グレードの高い高級物件として法人が多く契約しています。市街地から離れたところであれば戸建て貸家(築20〜30年)の市場性もあり、築齢が古くても水回りの設備を入れ替えれば、高い賃料での入居者募集も期待できます。
飯塚市では、今春の賃貸市場の特徴として、例年より動きが遅く、来店は減少。コロナ禍で賃料の減額依頼も増えていますが、店舗系の滞納は助成金で減少しています。
また、新築、リフォーム済物件の成約率は例年通り推移しており、シングル・ファミリーともに動きが出てきているといいます。賃料相場は1R〜1DKが2.8〜4万円。2DKが3.5〜4.5万円。2LDK〜3DKが4.5〜6万円。3LDK〜が5.5〜7万円です。
市立中学校再編新中学校建設の影響に期待
田川市では、新たな中学校建設に伴い近隣に住民が集まってくる兆候がみられ、後藤寺・伊田地区の人気が更に高まると期待されています。人気エリアはシングル層が県立大学、伊田地区。DINKs層は201号バイパス沿い。ファミリー層と法人は後藤寺・伊田地区。外国人は白鳥工業団地までのアクセスがよいところです。その背景には、田川市から北九州市までの産業道路の開通が影響していると考えられます。
定住促進政策は続くも流出やまず
嘉麻市では、若い人の定着を図るための定住促進補助金政策は続いています。しかし、人口の流出は止まず高齢化率は県内トップです。
嘉麻市では、コロナ禍で人の移動は少なく、賃料の減額もあるといいます。人気地区は飯塚市に近い稲築地区で、物件も多くあります。ファミリーを中心に3LDKなど広めの物件が好まれ、戸建て賃貸に人気があるようです。
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