福岡県の不動産市況
本特集記事は、県内49社の宅建業者を対象に、1月~3月にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内の賃貸市場の動向についてまとめたものです。
筑紫野エリア
賃貸一棟売りは地価上昇で利回り合わず
筑紫野市の賃貸市場については、数は多くないものの新築の賃貸物件が供給されています。不動産業者による一棟売りも見られますが、地価の上昇で利回りが合わないという声が大半です。
二日市周辺の賃貸は1LDKのシングルが新築の場合6〜7万円、築10〜15年で5万円台です。ただ、二日市は学生の街でもあり、1LDKタイプは少なく、1Rや1Kがたくさんあり、築古のアパートは1万円を切るものもあります。東南アジア系の留学生なども入居しています。
太宰府市の賃貸市場については、賃貸で太宰府市を選ぶという入居者は筑紫野市と比較すると少ない傾向です。
甘木・朝倉エリア
外国人労働者の需要で新築増加
甘木・朝倉エリアの賃貸市場に関しては、シングルタイプ(小ぶりの1LDKガレージ付き)のアパートが数多く新築されています。朝倉市には大学はありませんが、朝倉市内や近隣の田主丸にあるダイハツの自動車工場の従業員や農業に従事する外国人労働者の需要もあり、企業の中には、こうした外国人労働者のために、築古の戸建や3DK以上のアパートを法人として借り上げるケースも多くあるといいます。ファミリータイプの需要も高く、3LDKの新築はネットで広告しなくてもすぐに決まる状況です。
春日エリア
福岡都市圏からの流入組多く賃料上昇
賃貸市場については、春⽇・⼤野城ともに福岡都市圏からの流⼊が多く、賃料が上昇しています。供給の少ない駅近の3LDKの分譲賃貸なら15万円前後、賃貸用マンションなら築浅で13万円前後、築10年以上でも10万円前後が目安になっています。30㎡以上の1LDKだと新築で7.5万円前後、築古でも6.5万円前後が目安になっています。供給が多い2LDKや25㎡以下のシングルタイプは築年数や立地によってばらつきが大きくなっていますが、競争がある中でも軒並み賃料は上昇傾向にあります。
なお、このような状況にありながらも、建築費の高騰により新築計画の利回りが下がっており、新築の供給は減少傾向です。
久留米エリア
JR久留米駅前に建設予定のタワーマンションに期待
久留米市は、昨年、西鉄久留米駅構内の商業施設がリニューアルされ、新規の商業店舗が開店し、高級感のあるお店に加え、若者に人気の店が増えたことで、賑わいが戻り、明るくなったという印象です。また、シャッター通りとなっていた駅前の商店街にも飲食店が軒を連ね、若者を中心に人通りが多くなり活気が出てきています。
JR久留米駅周辺では、市街地再開発事業として、令和9年に同駅徒歩1分の地に36階建て免震タワーマンション「久留米ザ・タワーレジデンシャル」が竣工予定です。住宅棟と店舗棟の2棟で構成され、店舗棟には商業施設が入居することが予定されており、賑わいのある活気に満ちた街になることが期待されています。
JR久留米駅周辺のマンションはファミリータイプが中心です。近くに久留米大学医学部がありますが、医学生ということもあってか、学生もファミリータイプに入居しているといいます。
JR久留米駅は新幹線駅とも共用しているため、福岡市内への通勤、通学に新幹線を利用する人もいます。ビジネスで東京出張する場合も、福岡空港の駐車場のことを考えると、新幹線と地下鉄を利用する方が早くて便利で経済的との声も聞かれます。
合川町エリア
活気ある合川町エリア
東合川エリアは、国道322号線十三部交差点から「ゆめタウン久留米」のある国道210号線新合川2丁目交差点までを結ぶ中環状道路が開通したことで、商業施設ができはじめ、地価も上がっています。久留米市の中では活気のあるエリアといえます。
東合川には多くの賃貸マンションがありますが、賃料は他のエリアと変わらず、1LDKの新築なら8万円前後、築古ならおよそ6万円です。ファミリータイプの新築なら10万円程度ですが、ほとんど建つことはありません。賃貸マンションの利回りは、建築費の高騰が響いて6%を切る状況です。
御井町エリア
新築賃貸に学生の入居が増加
昨年まで続いた久留米大学生向け築古1Kアパートの建替えは落ち着いています。新築の賃貸マンションが建つとすぐに満室になりますが、築古のアパートに空室が生じるという状況です。最近は、新築の賃貸マンション、しかも1LDKに入居する学生が多くいます。賃料は新築の1LDKで8万円ほど。1Rの新築はあまりありません。
小郡エリア
戸建用地に賃貸マンション 敷地内に駐車場なし
小郡市の場合、分譲マンション用地が少なく、建っているのは、賃貸マンションです。120坪ほどの戸建用地に建設しているものが多く、敷地内に駐車場がありません。ほとんどが2LDKで新築は8万円。近隣の月極駐車場の相場が8000円で、諸経費をプラスすると10万円前後となります。小郡市には平岡調理・製菓専門学校と高尾看護専門学校があり、学生は1DK3万円程度のアパートに住んでいて、ほぼ満室状態が続いています。
筑後エリア
初期賃料設定から3割減額も
筑後市の場合、賃貸に関しては、大手建設会社などが建てていて、羽犬塚周辺の新築シングルタイプ1Rが7万円で広告されています。ただ、これでは決まりません。計画通りの設定賃料で一応募集し、決まらなければフリーレントにしながら徐々に下げ、結果的に3割ぐらい減額することになっています。2LDKや3LDKだと建築費が高すぎて収支が合わず、賃料を10万円に設定すると借り手がないため、どうしても1Rになるというわけです。1Rも当初の計画よりも値下げせざるを得ないので、収支は赤字になりますが、税金対策という営業トークにのって地主は建築に踏み切るわけです。サブリースで賃料を保証するというケースもありますが、やはり徐々に賃料を下げられて、結果はかなり厳しいものになるというのが一般的です。1Rの賃料相場は5.5万円〜5.8万円です。
柳川エリア
戸建賃貸に人気 高い入居率で安定経営
柳川市の賃貸市場は供給過剰状態です。賃貸マンションはほとんどなく、アパートが建っていますが、最近は戸建賃貸が人気です。3LDKで賃料が約8万円。入居率は高くなっています。地主にとってはアパートよりも収益率は落ちますが、定住性が高いため安定収入に繋がるという魅力があり、1区画に3~4棟建っています。ファミリータイプのアパートも賃料が上がっていますが、築30年以上だと入居率は低下します。リフォームしても厳しい状況です。ネットユーザーが増え、物件検索時に最初から築年数で弾かれている印象です。
大川エリア
学生向け賃貸物件が増加
大川市には地域の基幹病院である医療法人社団高邦会高木病院があり、高邦会グループの教育事業として国際医療福祉大学福岡保健医療学部と福岡薬学部、大川看護福祉専門学校が所在しています。国際医療福祉大学の学生だけでも2000人を超えており、学校周辺を中心に学生向けのシングル1Rや1LDKタイプの賃貸が増えています。賃料は4~5万円。アパートタイプとマンションタイプ、両方建っています。
また、大川市の中心部には家具の展示会のために、国内外から来るバイヤー向けのビジネスホテルもあります。大川は、家具の生産販売だけでなく、日本中の家具をストックする場所にもなっており、運送ルートなどもできあがっていて、そこに従事する人、また、海外から来る家具製作の技能実習生にも賃貸の需要があります。
大牟田エリア
学生賃貸は供給過剰 1Kが4万円台
有明海に面した岬町にあるイオンモール大牟田や石炭産業科学館の側に帝京大学福岡キャンパスがあり、学生向け賃貸物件もありますが、供給過剰で若干、空室があります。賃料は、1Kで4万円台です。
飯塚エリア
賃料上昇も若者世代は新築・築浅を選ぶ傾向
飯塚市で人気のエリアといえば新飯塚駅周辺で、「本当に住みやすい街大賞2023in福岡」で第3位にも選出されています。また、JR飯塚駅周辺も令和8年度中の供用開始に向け、飯塚駅舎の建替えや東西の駅前広場の再整備が進んでいます。
賃貸市場については、建築費の高騰はあるものの新築物件は供給されています。賃料は上昇していますが、若い世代は新築、築浅を選ぶ傾向にあります。賃料が上がっている分、初期費用を下げるなどの工夫が必要です。人気の設備としては、属性に関係なくネット無料、シングルならオートロック・バストイレ別、ファミリーはペット可・駐車場2台という声が多いといいます。
田川エリア
人気の衣類乾燥機「乾太くん」
田川市の賃貸については、シングルは余りなく、ほとんどがファミリータイプです。人気の設備としてガス式衣類乾燥機「乾太くん」が注目されています。新規入居者に人気があり、事業者が申請すれば、省エネ設備補助金の対象になり、かつ、ガス代も安く、賃貸マンションに標準設置しているケースもあるといいます。
鞍手・直方エリア
鞍手町新庁舎が完成
鞍手郡鞍手町に省エネ対策Nearly ZEB(ニアリーゼブ)を実現した新庁舎が完成。周辺には医療施設、公民館、博物館、子ども広場などが整備され、コンパクトシティを目指していますが、既存住宅地へのサービス低下リスクを指摘する声もあります。
人口は微減状態で、外国人の増加が目立ち、不動産の取引は全体として低調。中山、小牧地区を中心に動いています。
直方市内は、もち吉グループの「もちだんご村MALL」があり、多くは北九州市八幡西区からの来客だといいます。この影響もあり、直方市内の旧商店などは軒並み閉店しています。
稲築エリア
飯塚市内と変わらないファミリータイプの賃貸
嘉麻市は、学生数の減少で市内の3小学校、3中学校を再編。令和5年4月に小中一貫校の義務教育学校を3校同時に開校しました。このうち2校が稲築エリアにあり、ファミリー層に人気のエリアとなっています。
嘉麻市では、シングルタイプの賃貸はほとんど供給されず、多くはファミリータイプで、「ふれんずエリアレポート」によれば、ファミリータイプは4.28万円(59.57㎡)となっており、飯塚市内とあまり変わらない賃料となっています。
