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福岡県の不動産市況
福岡県の不動産市況
 本特集記事は、主に賃貸仲介・管理業を行う県内53社の宅建業者を対象に、2月上旬から3月上旬にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内主要エリアの賃貸市場の動向についてまとめたものです。
筑紫野地区
西鉄大牟田線の高架化工事が終了するも地価に影響なし
 西鉄大牟田線の高架化工事が昨年8月に完了し、白木原駅、春日原駅、雑餉隈駅のホームが高架線上に新設されました。周辺の地価が上がるとの期待もありましたが、現状、変化はありません。 
利便性から人気の春日エリア
 春日エリアは福岡市に近く、利便性から通勤需要の賃貸住宅が人気であり、古い物件で畳部屋でも入居が決まります。とはいえ、空室がないからと強気で賃料を値上げすると決まりません。値頃感が好まれているようです。
筑紫野市は人口増加で持ち家・賃貸ともに需要は堅調
 筑紫野市は市役所が新しくなり、人口も増加。売買・賃貸とも需要は多いエリアです。また、賃料より好みに合った物件を重視する賃貸市場は1LDKの需要が圧倒的に高く、順番待ちの状態で、建てても次から次へと決まる状況であり、古い1LDKでも賃料を上げています。この1LDK人気は那珂川市や春日市、福岡市には見られない傾向です。他エリアの床面積は、春日エリアは広くて35㎡、那珂川エリアは28~32㎡ですが、筑紫野は43㎡で、地価が安い分広い面積をとれる点が人気上昇の一因です。
用途地域を変更し積極的な街づくりを進める那珂川市
 那珂川市は福岡市に隣接していること、また、博多駅方面への通学・通勤に便利なこともあり、この地で居宅を求める人が多くいます。その一方で用途地域の関係で規制区域も多く、那珂川市も積極的な街づくりのため、市街化調整区域の規制緩和を行う方向で動いています。
那珂川全体で賃貸市場は好調
 那珂川エリアの賃貸物件は、新しく広くて安いと評判であり、外国人からも需要があるため稼働率は高く、築8~15年の物件はすぐ決まるため、賃料を5千円ほど値上げすることも可能な状況です。ただ築30年を経過すると、3LDKはリノベしても5.5万円が限度です。
久留米地区
東合川エリアの渋滞解消に向けた道路工事が完了。事業用地の争奪戦が始まる
 久留米市の課題は道路状況の改善です。東合川エリアは合川バイパスと上津バイパスの2道路を基準に物件があります。久留米は車社会が形成されているため渋滞が激しく、対策として「ゆめタウン久留米」から十三部への中環状道路が全線開通しました。それを受けて、事業用地の争奪戦がすでに始まっています。
 賃貸については、東合川エリアは賃料が高いため、高所得層の入居者が多いのが特徴です。建売を買う顧客の優先順位は、立地です。ミニ開発で価格を抑えるところもあります。
久留米市ではミニ開発が可能になるも恩恵は限定的
 久留米市は市街化調整区域内の開発許可基準を緩和し、令和2年6月から市が指定した「駅から半径500m以内」であれば、市街化区域と市街化調整区域が隣接する所において、特定の開発ができることになりました。しかし、要件に該当する駅自体が市の西側に偏っており、西部地区の人は恩恵を受けることができますが、東部地区の人は、駅周りが農業振興地域であり恩恵がありません。
大手量販店等の出店も賃貸市場に動きなし
 小郡イオンには筑後最大の広さとなる「無印良品」が出店すると話題になり、大手量販店「コストコ」が大分自動車道・筑後小郡インター近くに出店予定ですが、小郡の賃貸物件に動きはありません。ファミリーの新築物件は人気が高く退去も少ないのが現状です。主力は3LDKで、部屋数が足りなくなったら中古住宅の4LDKを購入するという流れです。賃料が異常に高いので建売分譲へ流れています。
県南地区
人口は減少傾向でも八女市内で多い建物の建築
 北九州市に次いで2番目に広い八女市。中心部の旧八女市から山間部を通じて熊本、大分と接しています。人口が毎年減少しているとはいえ、住宅のニーズはあり、建売分譲に限らず更地に建築するケースも多くあります。ただ、山間部は衰退の一途で高齢者の移住が目立ちます。他地区からの移住もなく、人口は減少傾向なのに、八女市内に家が建っているのは不思議な現象です。
大川市の賃貸は供給過多で多くは1Rタイプ
 大川市の賃貸物件は供給過多で、多いのは1Rタイプです。ファミリーに比べ建築費が抑えられるからです。賃貸物件は市内の国際医療福祉大学へ通う学生を相手に動いていますが、新築は少ない状況です。ファミリーにも需要はありますが、新しい物件がありません。外国人研修生も増えています。
大牟田駅周辺にマンション3棟を社宅として募集するも直ぐに満室
 現在、大牟田市内は中心部をはじめ土地がありません。山の方は崖条例があり、防災上の観点から平地へ移住する人が多くいます。明治期から1960年代まで産炭地として栄えた鉱山関係の不動産は売りつくされ、炭住跡地は残っていません。
 大牟田駅周辺には最近1R物件がなく、事業所向けマンションを社宅として募集すると、転勤族などですぐに満室となる現状です。大牟田には海岸沿いに工場が集積しており、外国人が多く勤めていますが、自社寮がないため、法人が民間賃貸を一括で借り上げています。
住宅建築の需要はあるが農振地域で規制厳しく宅地化に壁
 旧山門郡(瀬高、山川)と旧三池郡(高田)が合併して発足したみやま市は、県南・大牟田市エリアの一角を占めています。工務店など地場業者が建売などを行っています。445号線(鹿児島街道)沿いには道の駅「みやま」があり、客が多く人気です。ただ周辺は農業振興地域なので思うように住宅が建てられません。
 賃貸市場を見ると、アパート建設が増え新規入居者は増えていますが、古い物件の空室が目立ちます。
筑豊地区
飯塚駅にゆめタウンモールが進出。駅周辺の再開発にワクワク感
 飯塚駅西側の地方卸売市場跡地に「ゆめタウンモール」が進出し、駅周辺の再開発が本格稼働するなかで分譲マンションが建設されるという流れもあり、期待感が醸成されています。
 今回進出する「ゆめタウン」は、飯塚では初のモール登場となり、中には映画館が開設され、さらに大手コーヒー・チェーン「スターバックス」が進出するため、市民の関心は高まっています。
中学校の統廃合で賃貸市場に微妙な影響
 田川市は昨年春に実施された統廃合により、市内の中学校は2校となり、1校あたりの生徒数が増加。結果、学校まで遠くなった家庭から、学校近くの不動産を探す依頼が増えています。今後の賃貸市場に若干な影響が出てくる可能性があります。
 福岡県立大学の学生数は1000名に満たず、初期の頃に建てられた大学周辺の1Rは老朽化して入居申込はなく、駐車場付の1Rに入居が集中しています。
病院が多い田川市、賃貸物件は医療従事者の寮に
 田川市は人口が少ないわりに病院が多いのが特徴です。田川市立病院と社会保険田川病院の二つの大きな病院があり、賃貸物件は医療従事者の寮などに充てられています。
 田川エリアは、賃料は下がり気味ですが、他地域に比べると賃貸物件の賃料が高いため、住宅ローンの方が月々の支払が楽という考えがあります。また、住宅供給過剰でもあり、飯塚地区との競争にもなっています。
鞍手町役場が駅西側に移転。公的施設の集中に疑問の声も
 鞍手町では町の中心にある町役場が、筑豊本線(福北ゆたか線)鞍手駅西側に移転する予定です。予定地周辺には文化体育総合施設や中央公民館・体育センターなど公的施設やスーパーが集中しています。その一方で、各施設が分散する方が人の動きが生まれるのではないかと、施設の集中に対して疑問を呈する声も聞かれます。
 鞍手町の産業は大規模な「鞍手工業団地」での製造業です。人手不足で外国人労働者が集まるため、法人契約の入居者の受け皿となっています。

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